さくBは折り紙を折っている

saku B is folding origami.

折り紙分子|折り紙の創作ってどうやるの?

第4回折り紙創作解説動画

「折り紙分子」が投稿されました。

 

今回から、

「わざわざ動画見るのはめんどくさいなあ」

という方向けに、ブログに原稿を載せたいと思います。 

 

編集中に原稿の内容が変わることもあるため、

動画とは微妙に異なる可能性があります。

 

 

以下、原稿

 

この世界がたくさんの分子によって作られているように、
折り紙もまたたくさんの分子によって作られている。
折り紙分子を組み合わせれば、
思いのままに世界を作り出すことができるかも知れない。

こんにちは、さくBです。
今回は折り紙分子についてお話しします。

折り紙の創作で折り紙分子を直接使う機会は少ないかも知れませんが、
展開図にはよく現れるので、
知っておくと構造の理解に役立つと思います。

さて、折り紙分子を定義する前に、
折り紙原子について説明しましょう。

折り紙原子とは、展開図上に現れる多角形のうち、
内部に折り線を持たないものを指します。
ここで、折り線とは山折りと谷折りのことです。
つまり、展開図を折りたたんだ後の平らな面です。
例えば、赤線で囲った部分は折り紙原子ですが、
青線で囲った部分は折り紙原子ではありません。
青線で囲った部分の内部には折り線が含まれているからです。
折り紙原子の辺は紙のフチまたは折り線からなります。
基本的には凸多角形になります。

折り紙分子の定義の仕方は色々あるかもしれませんが、
ここでは、「複数個のひとつながりの折り紙原子の集まり」とします。
折り紙原子同士が離れていてはいけません。

折り紙分子は、
平坦に畳んだときのフチの位置関係によって
一値性、ニ値性、多値性などに分けられます。
一値性とは、折り紙分子を平坦に畳んだとき、
分子の外周が同一直線上に乗ることを指します。
ニ値性とは、折り紙分子を平坦に畳んだとき、
分子の外周が2つの直線上に乗ることを指します。
3つ以上の場合は多値性と呼びます。

一値分子として有名なものに、
直角二等辺三角形分子、長方形分子、
切り出しナイフ型分子、ブーツ型分子、
凧型分子などがあります。

ニ値分子として有名なものに、Y字分子があります。

さて、何故このようなことを考えるかというと、
一値分子同士を辺でつないでできる分子もやっぱり一値性を持つからです。
例えば、2つの直角二等辺三角形分子をくっつけた分子も、
やはり一値性を持っていますし、
鶴の基本形も4つの直角二等辺三角形分子からできています。
このことから分子をペタペタと並べていくことによって
折り紙の創作ができそうだということがわかります。

実際に適当に折り紙一値分子を並べて展開図を作ってみました。
これを折りたたむと、確かにフチが一直線上にありますし、
ここから折り進めて何かができるかも知れません。

これまでは22.5度系の折り紙分子について見てきましたが
実は、どんな角度の三角形もつまみ折りをすることで
一値性を持つように折りたためるという事実があります。
三角形の各頂点の角の二等分線は一点で交わります。
この点は内接円の中心と一致することから、内心と呼ばれます。
内心と各頂点を結び、
内心から1つの辺に垂線を下ろすと
これらの線で一値性を持つようにたたむことができます。


また、四角形や五角形についても、
いくつかの三角形に分割することができるので
やはり一値性を持つように折りたたむことができます。
よって任意の多角形は一致性を持つように折りたたむことができます。

これらのことから、折り紙をいくつかの三角形に分割することで、
一値性を持つ基本形を作り出すことができます。
試しに展開図を作ってみました。
これを折りたたむと、このようになりました。
ここから何かの作品に折り上げることができるかも知れません。

今度は蛇腹系の創作に関連のある話をしましょう。
各辺の長さが自然数である直角三角形のことをピタゴラスの三角形と言います。
例えば、3辺の長さが3,4,5や
5,12,13である三角形はピタゴラスの三角形です。
図のようにピタゴラスの三角形の各頂点が格子点上に乗っていて、
2辺がそれぞれx軸、y軸と平行なとき、
内心は格子点上に乗ることが知られていて、
三角形の面積を考えることで示す事ができます。
これは、ピタゴラスの三角形をつまみ折りによって一値分子としたとき、
カドの長さが全て整数になることを意味しています。
カドの長さのコントロールが重要になる蛇腹系作品の創作では便利な性質です。
ちなみに折り紙作品の展開図でこの性質を利用した部分のことを
神谷パターンと呼んだりします。
この性質の証明については、別の動画でやることにします。

今回は折り紙分子についてお話しました。
折り紙分子による設計は紙効率が悪くなりがちで
あまり実用性はないかも知れませんが、
展開図折りをするときなどは役に立ちます。
さあ、そろそろ眠たくなってきました。
また次回お会いしましょう。
それではおやすみなさい。